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TVアニメ アイドルマスターシャイニーカラーズ(劇場先行)の感想【思い出補正で楽しむ薄味お出汁】

10/27から劇場で先行上映されていた、シャニマスのTVアニメを全話鑑賞したのでその感想

10/27から劇場で先行上映されていた、シャニマスのTVアニメを全話鑑賞した。

正直なところ、アニメ作品としては微妙な出来に思えたので良かった点・良くなかった点を挙げていく。

記憶が薄れていて間違った記述もありそうだが、許してほしい。

Warning

以下ネタバレ込みです。
また不満寄りの感想なので、嫌な方は「良かったところ」だけ読むことをおすすめします。

良かったところ

動きでの芝居

本作ではセリフによらない芝居にこだわっているようで、特に手や目の動きにクローズアップして登場人物の感情を表現する試みが印象的だった。 1

良くも悪くも30分アニメらしくない表現だが、個人的にはシャニマスの空気感を表現しようとした試みとして好意的に捉えている。

また日常の座り方やダンスシーンなどのモーションにはキャラクターごとの個性が表れており、見ていて楽しいポイントだった。

作画

セルルック3D作品ということで懸念していた作画も概ね高い水準でまとまっていた。
瞳の描き方などは違和感のある人もいそうだが、自分の場合は早い段階で慣れたため特に気になることはなかった。

ダンスシーンで顔に付いた汗なども表現することで、実在感に繋がっていたのも良かったと思う。

良くなかったところ

楽曲・音響

TVアニメ化の発表を聞き新曲のリリースに期待していたのだが、現状アニメ内で使われた新曲はOPのツバサグラビティのみ。
ED曲すら新曲がないのは正直に言って期待外れだった。
また既存曲・新曲共に同じ曲が劇中・EDで何度も流れており、新鮮味が薄い。

劇伴についてもピアノと弦楽器を主体として、低音域が強い楽曲が多く、作品全体として落ち着いた重厚な雰囲気に繋がっていた。
好みの問題も大きそうな要素だが、自分の場合は明るいポップなBGMが少ない(ように感じた)こともあり、必要以上に重苦しい印象を覚えた。

劇場公開作品としては音響・音質にも気になる点が見られた。
特にOPのツバサグラビティはサビ部分を中心に中高音域がひずんだように聞こえ、ボーカルも音割れ寸前のような状態だった点が残念。

素人ながらもう少しミックスなどでどうにかならないかと感じた。

構図・カメラワーク

構図やカメラワークについては序盤に気になるシーンが多かった。

5人くらいの人物が会話をするシーンでカットを割らずに、カメラが同じ位置から次の話者に何度もパンして話を続けることが多かったように思う。
結果としてカメラが高速でカクカクと動くことが多く、せわしない印象を受けた。

その際の構図も話者を中心にバストアップで映すことが多く、絵面が退屈な印象。
事務所やレッスン室など空間が狭い場面が多く難しいのかもしれないが、もう少し画面に変化が欲しかった。(人物を映さず、風景や小物を中心とするなど)

ひたすら平坦なストーリー

個人的に一番厳しかったのがこの点。

作中で生じるトラブル・アクシデントが小規模かつぼんやりとしており、発生によるショックや解決した際のカタルシスを感じることができなかった。

小さなほころびに丁寧に向かい合う形での描写もできると思うが、それならばもう少し登場人物達の危機意識を分かりやすく伝えて、視聴者側に「解決しないとマズい問題なのだ」と思わせて欲しかった。

また物語の起伏が緩い割に展開が早い点も淡白な印象に拍車をかけていた。

大体のトラブルが特に大きなイベントも介さず、会話程度で解決に向かっており「いつの間にか話が変わった」という印象が強かった。
解決後にプロデューサーのポエムっぽいモノローグがよく入るのだが、作中エピソードの小規模さに見合っておらず、それっぽい事言わせて無理やり話進めたように思えてしまう。

作中で最も大きな挫折だと思われる、WING敗退についても

6話 各ユニットがWINGに向け準備をする→
7話 WINGで敗退してしまったため、ユニットごとに心新たに頑張る決意をする

といった構成になっており、「知らないところでWINGが終わり、知らない挫折をみんなで話して乗り越えた」ような印象を受けてしまった。

なぜ負けてしまったのかという描写もないため視聴者としては他人事感が強く、WING後のユニットごとの会話にもあまり感慨を覚えなかった点が非常に残念。

登場人物の心情がよくわからん

良い点として挙げた「セリフによらない芝居」の副作用と言えるが、登場人物の気持ちや動機が分からない場面が多かった。

真乃が283プロに所属を決意したり、シャイニーカラーズのセンターの役目を引き受けるイベントは、作中でも大きな山場だったが、「なぜためらっているのか」「なぜ受け入れたのか」がいまいち分からなかった。
結果として前述の平坦なストーリーにつながり、見ていて感情があまり動かなかった。

プロデューサーについても行動の意図が分からないことが多く、その割に最適解を確信しているかのように決断を下す点にあまり納得感がない。
なぜライブをするのか、なぜ真乃にセンターを任せるのかもう少し明示的な説明が欲しかったし、アイドル達と考え悩むような描写が欲しかった。

まとめ:これ誰向けの作品?

色々と個別に気になる点はあったが、最終的に「誰に向けて作ったのか」という疑問が生じた。

原作の空気感が好きなファン向けであれば空気感の表現への挑戦は理解できるが、キャラ紹介やコメディなどを最小限にして、もっと尺を使った芝居が見たかったし、2
新規ファンの獲得を狙うのであれば、キャラ紹介に加えてもっと分かりやすいフックが必要だろう。

様々なニーズに応えようと要素を増やしたことで、どっちつかずの印象の弱い作品に繋がったのではないだろうか。

結果として生まれた上品っぽくて味の薄いお出汁のようなストーリーを、原作のオマージュ3や1stライブの再現要素で味付けして楽しむような作品だった。

ゲーム作品のアニメ化ということで制作陣が原作をどう解釈しているのか、何を軸にストーリーを構築するのかに期待していたので、原作頼りで独自性・独立性の薄いストーリーになってしまった点がかなり残念。

個人的には通勤中や作業中に眺める分にはいいけど、わざわざスケジュール調整して映画館で集中して見ることを他人には勧められないなと思う。4

TV放送時に映画館とは異なる環境で見た人の感想も気になるところ。

追記


  1. このような表現が良くない点につながっている感もあった。後述。 ↩︎

  2. 「リズと青い鳥」あたりをイメージしてます ↩︎

  3. 何の脈絡もなく原作のセリフが出て来たり、同じイラストの構図が複数の話数で使われていたりと、取り敢えず入れてる感もあった ↩︎

  4. 特別興行だから割引使えないし… ↩︎

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